
2026年4月17日



国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所、アニコム先進医療研究所株式会社、麻布大学の共同研究グループは、長鎖リード技術※1を用いたゲノム※2情報の再構築(ゲノムアセンブリ)※3により、北海道に分布するニホンジカの亜種エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の国際基準ゲノム配列「CerNipYes1.0」を新たに整備し、公開しました。
既報のニホンジカゲノムは亜種が不明な飼育個体のもので、日本産の野生ニホンジカの全ゲノム参照配列は未整備でした。本ゲノムアセンブリは推定ゲノムサイズ3.1Gb、つなぎ合わせたゲノム配列の数(スキャフォールド数※4)は1,810、再構成したゲノム配列のつながりを示す指標であるN50※5が77Mbを達成しました。また、遺伝子完全性※6は12,562遺伝子(99.75%)で、既報のニホンジカのゲノム配列よりも多くの遺伝子の再構成に成功しました。ゲノム中の反復配列※7は21.6%と推定され、いずれも既存の配列データと同等かそれ以上の値でした。シカ科でみられるゲノムサイズや形質の多様性解明、系統・進化研究だけでなく、生態・管理の研究基盤として活用が期待されます。データは日本の国際DNAデータバンクであるDDBJと米国アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)で利用可能です。
本研究成果は、2025年12月27日にData in Brief誌でオンライン公開されました。
シカ科(Cervidae)は陸上偶蹄類の中でも大きな分類群で、ニホンジカ(Cervus nippon)は東アジアに自然分布し、14亜種を含むことが知られています。北海道に分布する亜種であるエゾシカ(Cervus nippon yesoensis)は、生態・管理の観点から研究が進んでおり、遺伝学的研究からは過去の深刻なボトルネック後に分布が拡大した可能性も示されています。一方で、全ゲノム解析は集団動態・系統・形質の分子基盤解明に有用であるにもかかわらず、これまで報告されていたニホンジカのゲノムは中国の飼育個体(亜種不明)に由来しており、野生個体や日本産ニホンジカの全ゲノム参照配列は未整備でした。そこで本研究では、起源・亜種が明確な北海道産野生エゾシカについて、長鎖リード技術を用いたゲノムアセンブリを実施しました。
研究グループは、北海道の狩猟管理区域で捕獲された雄のエゾシカから筋肉試料を得て、ゲノムDNAを抽出しました。その後、ゲノム配列解読装置PacBio Sequel II によってHiFi長鎖リードを取得し、高品質な塩基配列をベースにゲノム情報の再構築(ゲノムアセンブリ)を実施しました。ゲノム配列の品質を示す統計データは複数の解析ソフトウェアで推定しました。
その結果、総塩基数は約588億bp、平均リード長は約14.9kb、推定カバレッジ※8は約18.7×でした。構築したゲノム「CerNipYes1.0」は推定3.1Gbで、スキャフォールド数は1,810、N50は77Mbを達成しました。遺伝子完全性は12,562遺伝子(99.75%)が完成として評価され、反復配列の割合は21.63%でした。データは日本の国際DNAデータバンクであるDDBJと米国アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)で公開されています。
本研究で公開したニホンジカの北海道亜種であるエゾシカの野生個体ゲノム情報は、シカ科にみられるゲノムサイズや形質の多様性の解明に繋がり、進化研究の基盤データとして広く活用されることが期待されます。また、より精度の高い血縁関係の推定を可能とするため、今後、この基盤情報を使ったさらなる解析により、移動ルートや地域間の個体群の関係性など、ニホンジカの生態や管理に重要な情報の収集が可能になると考えられます。
本資料は、農政クラブ、農林記者会、林政記者クラブ、筑波研究学園都市記者会、文部科学記者会 などに配付しています。